画像処理アルゴリズムの基礎と代表的なアルゴリズムについて解説

COLUMN(外観検査自動化)

画像処理アルゴリズムは、画像を解析するための手法です。この記事では、その基本的な概要から高度な活用までを解説しています。画像解析の導入に迷っている方にとって、貴重な情報源となるでしょう。

画像処理アルゴリズムとは?

画像処理アルゴリズムとは、画像を解析するために設計された一連の手順のことです。画像処理アルゴリズムは、画像のノイズ除去、エッジ検出、コントラストの強化など、多岐にわたる操作を行います。また、顔認識や物体検出のような高度な応用では、機械学習や深層学習の技術を組み込んで、より複雑な画像解析を実現します。

画像処理アルゴリズムを使ってでできること3種

画像処理アルゴリズムでできることは多岐にわたりますが、大きく分けると認識、検出、生成の3つに分類できます。それぞれの特徴について解説します。

認識

(出典:https://crystal-method.com/blog/object-detection/)

画像処理アルゴリズムを用いた認識は、特定の物体やパターンを識別し画像に何が映っているかを認識する能力です。これは、顔認識や文字認識、良/不良の分類などのアプリケーションで広く利用されています。次に認識を用いた代表的な活用方法を5つ解説します。

顔認識

顔認識は、個人識別やセキュリティシステムなどの多くの応用分野で利用されています。画像処理の中でも特に注目され、進化が著しい分野の一つです。個々の人間の顔の特徴を解析し、顔を特定するために使用されます。公共の場やセキュリティシステムでの利用が増加しています。また、スマートフォンの顔認識ロック機能や写真アプリの顔検出機能など、日常生活でも広く利用されています。

文字認識

文字認識は、印刷文字や手書き文字を画像から自動的に識別する技術です。ビジネス文書のスキャンや古い文書や書籍のデジタルアーカイブプロジェクトなど、さまざまなアプリケーションで利用されています。OCR(Optical Character Recognition)としても知られ、多くの場面で利用されています。

シーン認識

シーン認識は、画像内の特定のシーンや環境を識別する技術です。自動運転車などの応用分野で重要な役割を果たしています。画像内のさまざまな要素や特徴を解析し、その情報から場所や状況を推測します。これにより、自動運転車の周囲環境の理解が可能となります。

分類

分類は、画像内の物体やシーンを適切なカテゴリに分類する能力です。画像内の特徴を抽出し、それを基に適切なカテゴリに分類します。ImageNetなどの大規模な学習用データを用いて学習したモデルは、数千ものカテゴリに高い精度で画像を分類することが可能です。

例えば、自動運転車の場合、歩行者、自転車、車両などの障害物を正確に分類し、適切な行動を選択するのに役立ちます。

異常検知

異常検知は、通常のパターンと異なるものを検出し、異常な状況や行動を識別することです。

産業分野では機械の故障や不良品の検出をし、即座に対処することで生産性を向上させます。セキュリティ分野では不審な行動や侵入を検知し、即座に警告を発することでセキュリティを強化します。

検出(Detection)

(出典:https://crystal-method.com/blog/object-detection/)

画像処理アルゴリズムを用いた検出は、特定の物体やパターンを識別し画像の何処に何が映っているかを認識する能力です。(検出は物体の識別だけでなく、位置の特定が行われるという点で異なります。)

物体検出

物体検出は、画像内の物体の位置と種類を特定する技術です。自動運転車、監視カメラ、ロボットなど、多くの領域で活用されています。

学習モデルを用いて、画像内の物体の境界ボックスを検出し、そのカテゴリを推定します。これにより物体の識別やトラッキングが可能となります自動運転車のセンサーシステムでは、物体検出技術が道路上の車両や歩行者を検出し、適切な運転行動を支援します。

セグメンテーション

セグメンテーションは、画像内の物体をピクセルレベルで分割する技術です。各ピクセルに対して物体や背景のカテゴリを割り当てることで画像を分割します。これにより、画像内の物体の形状や位置を詳細に把握できます。

医療画像解析では、セグメンテーション技術が腫瘍や臓器の位置や大きさを正確に抽出し、診断支援に活用されます。環境モニタリングでは、衛星画像から森林や水域などの地域をセグメント化し、生態系の変化を追跡するのに役立ちます。

姿勢推定

姿勢推定は、物体や人物の姿勢を推定する技術です。ロボティクス、運動解析、スポーツトレーニングなどの分野で利用されています。画像や動画から物体や人物の関節位置等を検出し、その姿勢を推定します。これにより、人間の動作解析が可能になります。スポーツトレーニングでは、姿勢推定技術が選手の動作を解析し、動作の改善点を指摘するのに利用されます。

生成(Generation)

(出典:https://gigazine.net/news/20230714-stability-ai-stable-doodle/)

画像処理アルゴリズムを用いた生成は、新しい画像を生成する能力です。入力として与えられたデータに基づいて、新しい画像を合成または生成します。例えば、機械学習モデルの教師データを作成する際に既存の画像の一部をアレンジし学習用データの多様性を強化します。また、画像修復では欠損した部分を補完し、画像の品質を向上させます。あるいは、芸術分野において抽象的な画像や芸術的な作品を生成するのに活用されます。

生成アルゴリズムの種類は多岐にわたりますが、敵対的生成ネットワーク(GAN)や変分オートエンコーダー(VAE)などのモデルが有名です。

画像処理アルゴリズムの種類

画像処理アルゴリズムは、シンプルなノイズフィルタから複雑なパターン認識まで、さまざまな方法で画像データを解析します。ここでは代表的な画像処理アルゴリズムについて解説します。

基本的な画像処理アルゴリズム5種類

基本的な画像処理アルゴリズムは、画像の明るさ、コントラスト、形状などの特徴を操作することで、画像の品質を向上させます。また、高度な画像処理アルゴリズムを適切に行うための前処理として行われます。

二値化処理

二値化処理は、画像を白黒の2値画像に変換する手法です。ある閾値を基準に、画像の各ピクセルの明るさを比較し、閾値以上なら白、閾値以下なら黒として分類します。

エッジ検出

エッジ検出は、画像内の物体の境界や輪郭を検出する手法です。画像の勾配や微分を利用して、明るさの急激な変化を検出し、それを物体の境界とみなします。

ヒストグラム平均化

ヒストグラム平均化は、画像のコントラストを調整する手法です。画像のヒストグラムを解析し、明るさの範囲を均等に広げることで、画像全体のコントラストを向上させます。

ノイズ除去

ノイズ除去は、画像から不要なノイズを取り除く手法です。フィルタリングや平滑化などの手法を用いて、画像内の不要な情報を抑制し、クリアな画像を生成します。

膨張・収縮画像処理

膨張・収縮画像処理は、画像内の物体の形状を変化させる手法です。膨張は物体を拡張し、収縮は物体を縮小します。これらの操作により、物体の形状やサイズを調整することができます。

高度な画像処理アルゴリズム5種類

高度な画像処理アルゴリズムは、機械学習などの技術を利用して、より複雑な画像処理を実行します。画像の分類、検出、セグメンテーションなどのタスクに使用されています。

サポートベクターマシン(SVM)

(出典:https://ai-kenkyujo.com/artificial-intelligence/algorithm/svm/)

サポートベクターマシンは教師あり学習のクラス分類と、回帰のできる機械学習アルゴリズムです。画像処理においては分類を行うアルゴリズムとして広く利用されています。少ない教師データで高い汎化性能を持てることが特徴で、計算も早く過学習も起こしづらいので使い勝手が良く様々な分野で活用されています。ただし、データが偏ると、計算量が膨大になり、学習が非効率なため、データのサンプル数が多い場合は処理が難しくなるデメリットがあります。

例えば、手書きの数字の認識などに利用されています。

オートエンコーダ

(出典:https://toukei-lab.com/autoencorder)

オートエンコーダとは、ニューラルネットワークを利用した教師なし機械学習アルゴリズムの一つです。もとは次元削減や特徴抽出といった小さい次元に落とし込む作業を効率的に行うために開発されましたが、近年はデータ生成や異常検知などの用途でも用いられています。

オートエンコーダのネットワークは、入力したデータの次元数を下げ、再び戻して出力するという構造を持っています。入力と出力が一致するように学習することでネットワークの前半部分は次元削減と特徴抽出の機能を有し、後半部分は低次元の情報を基とするデータ生成機能を獲得します。前半部分をエンコーダ、後半部分をデコーダと呼び、それぞれ独立して利用することができます。

エンコーダは分類やノイズ除去などの用途で用いられ、デコーダは画像生成などの用途で用いられます。

畳み込みニューラルネットワーク(CNN)

(出典:https://developers.agirobots.com/jp/cnn-theory-pytorch-programming/)

畳み込みニューラルネットワーク(CNN)は、画像処理において重要なニューラルネットワークの一つです。CNNは複数の層を持ち、畳み込み層、プーリング層、全結合層などから構成されています。畳み込み層では、局所的な特徴量の抽出をし、プーリング層では特徴量を維持したまま画像データを小さくまとめる処理を行います、全結合層では、畳み込み層やプーリング層で抽出した特徴量から、全情報を取りまとめることで画像の認識ができるようになります。

CNNが主に価値を発揮するのは認識のタスクです。顔認識や物体検出などの分野で高い精度を実現しています。また、現代の画像処理システムの中心を担っており、多くの画像処理アルゴリズムと組み合わせて使用されています。

GAN

(出典:https://ai-kenkyujo.com/artificial-intelligence/algorithm/gan/)

GAN(敵対的生成ネットワーク)は、主に画像生成に利用されています。

GANの仕組みは、GeneratorとDiscriminatorの2つの要素で構成されています。Generatorは入力データの偽物を作り出し、Discriminatorはその偽物を見破るウソ発見器の役割を担います。この流れを繰り返すことで、生成データを訓練データに近づけることができます。最終的に、Generatorが生成する偽物が、本物である訓練データと区別できないような画像になっていればGANの学習は成功となります。

活用例としては、画像の高画質化、テキストからの画像生成、画像のスタイルを変換があります。

YOLO

(出典:https://ai-market.jp/technology/yolo/)

YOLO(You Only Look Once)は物体検出のタスクに適しており、特にリアルタイム物体検出において高速かつ正確な性能を発揮します。

YOLOという言葉は「You Only Look Once」という英文の頭文字です。日本語だと「一度見るだけで良い」という意味で、一目見ただけで物体検出ができることを指しています。

従来の物体検出システムと異なり、YOLOは画像全体を一度に処理し、物体の位置とカテゴリを即座に予測します。この手法により、非常に高速な検出が可能となり、自動運転などのリアルタイム処理が要求されるアプリケーションに採用されています。

適切なアルゴリズムの選択基準

適切な画像処理アルゴリズムを選択する際には、利用目的、画像データの特性、そしてリソースの制約の観点から検討することが重要です。

利用目的

適切な画像処理アルゴリズムを選択するためには、まず利用目的を明確にすることが重要です。画像の分類、検出、セグメンテーションなど、目的に応じて最適なアルゴリズムが異なります。顔認識のような精細なタスクでは、ニューラルネットワークベースのアルゴリズムが適していますが、サイズを見分けるだけの簡単な分類では、より軽量なサポートベクターマシンなどのアルゴリズムが有効になります。

例えば、医療画像解析では、腫瘍の切除範囲を知るためのセグメンテーションには精度の高いアルゴリズムが必要ですが、自動運転車の物体検出では、リアルタイム性が求められるため、YOLO等の高速なアルゴリズムが適切です。

画像データの特性

画像データの特性も、適切なアルゴリズムを選択する際の重要な要素です。画像の品質やカラーの有無、画像の種類(自然画像、医療画像、顔画像など)によって、最適なアルゴリズムが異なります。

高解像度の画像や多色の画像を扱う場合には、処理により多くの計算リソースが必要となります。また、低品質の画像データを扱う場合はオートエンコーダ等でノイズの除去や欠損部分の補完生成後に分類等のタスクを行うなどの前処理工程を設計する必要があります。

リソースの制約

適切なアルゴリズムを選択する際には、利用可能なリソースの制約も考慮する必要があります。処理に必要な計算リソースやメモリ、ネットワーク帯域などが限られている場合には、それに応じた軽量なアルゴリズムを選択することも重要です。

モバイルデバイスや組み込みシステムなどのリソースが制限されている環境では、適用することが難しいアルゴリズムがあります。そのため、計算リソースやメモリ使用量の少ないアルゴリズムを選択することで、リソースの制約に対処することができます。

最後に

この記事では様々な画像処理アルゴリズムについて解説しました。目的に合わせたアルゴリズムの最適な運用には、事前の計画と準備が大切になります。

Phoxterでは、画像処理アルゴリズムを活用した外観検査の自動化システムを提供しています。

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